熱気球事故数人飛び降りて急上昇
2月27日 19時14分
エジプト有数の観光地、ルクソールで、熱気球が炎上して墜落した事故で、服に火が燃え移った操縦士など数人が飛び降りたあと、機体が急上昇するのが目撃されており、地元の航空当局は、人が乗るかごの部分でどのように火災が起きたのかを中心に事故原因を調べています。
エジプト南部のルクソールでは、26日朝、外国人観光客ら21人が乗った熱気球が炎上して墜落し、日本人の2組の夫婦4人を含む合わせて19人が死亡しました。
当時、同じ場所で熱気球を飛行させていた別の会社の関係者や住民が、事故の様子を目撃していました。
それによりますと、墜落した熱気球は、遊覧飛行を終えようと地上5メートルほどの高さまで降下し、操縦士が地上にロープを投げて着陸の準備をしているときに火災が起きたということです。
このとき操縦士の服に火が燃え移り、この操縦士が地上に飛び降りたほか、数人の乗客も飛び降りたということです。
そして機体が炎上しながら急上昇し、地上150メートルから200メートルほどのところでバルーンがしぼんで墜落したということです。
エジプトの航空当局は、着陸直前に何らかの理由でガスバーナーの火が、人が乗るかごの部分に燃え移ったとみて、そのときの状況を中心に詳しく調べています。
一方、亡くなった日本人4人の遺体はカイロにある病院に安置されており、現地の日本大使館では、遺族がカイロに着きしだい、遺体と対面できるよう調整を進めています。
熱気球が墜落した現場には、事故から一夜明けた27日、地元ルクソール県のサード知事が訪れて、花束を手向けて犠牲者を追悼しました。
現場では、前日には黒こげとなった残骸が残されていましたが、27日にはほとんど撤去されていました。
サード知事は、事故原因についての記者団の質問に対して「政府の調査委員会や司法当局が調査しており、今の段階では言えることはない」と述べるにとどまりました。
一方、事故が起きた熱気球を運航していた「スカイクルーズ」社の弁護士によりますと、会社では4機の熱気球を保有し、3人のパイロットが働いているということです。
このうち、今回事故が起きた熱気球を操縦していた28歳の男性は、およそ1年半前に「スカイクルーズ」社に入社し、入社前の経験も含めて少なくとも700時間飛行した経験があったということです。
また、これまでに事故やトラブルを起こしたことはなかったということです。
ツアーに参加して亡くなった日本人4人は、東京・世田谷区に住む柘植和夫さん(66)と、妻の晴美さん(63)。
それに、東京・世田谷区に住む寺田康秀さん(63)と、妻の麻子さん(63)と分かりました。
柘植和夫さんは、品川区内にある運送会社の会長を務めていました。
会社の監査役も務める妻の晴美さんとともにエジプトを訪れていて事故にあったとみられています。
柘植さんの会社は、近くにある大井競馬場など、南関東の競馬場の調教師に競走馬を輸送する仕事などを主に行っていたということです。
遺族から連絡を受けた43歳の社長によりますと、「柘植さんは去年、社長を退いて会長になり、やっと時間に余裕ができたから、長期間の旅行を楽しみたいと話していました。とても温厚な人柄で、リーダーシップがあり、会社の大黒柱を失い、とても残念です」と話していました。
会社には取り引きのあった関係者が時折訪れており、男性の1人は「仕事をしっかりこなす、おとなしいタイプの人でした。今も信じられません」と話していました。
柘植さんは仕事柄、複数の競走馬を所有していたということです。
5年ほど前まで柘植さんの馬1頭を預かっていたという、調教師の柏木一夫さん(62)は、「エジプトに行っていたことも知らなかったので、非常に驚き、今でも信じられない。柘植さんはいつも笑顔で温厚な人で、自分の馬が出走すると、勝っても負けても喜んでいた。何度かゴルフもしたことがあるが、ビールを飲んで楽しそうにしていたのをよく思い出します」と話していました。
また、寺田康秀さんの親戚で、甲府市に住む寺田喜美子さんは、「ニュースで『テラダ』と伝えられていましたが、まさか身近な人だとは思っていなかったので、非常に驚いています。康秀さんは品があっておとなしい人でした。残念です」と話していました。
熱気球の仕組みや運転に詳しい、「熱気球倶楽部(クラブ)ぐんま夢座」の橋詰純一代表によりますと、熱気球は、LPガスを燃料にして、「バーナー」と呼ばれる装置で炎を起こし、風船部分の空気を温めることで生まれる浮力を利用して飛ぶ仕組みになっています。
人が乗る「バスケット」と呼ばれるかごの部分に燃料ガスの入った容器が積まれ、ホースを通じてガスをバーナーに送り込みます。
パイロットはガスの量を調節しながら、炎の大きさを変えて熱気球を制御します。
着陸するときには、炎を大きくしたり小さくしたりする操作を繰り返しながら、少しずつ高度を下げ、着陸する直前にガスを止める手順をとるということです。
橋詰さんは「今回の事故で、炎が下に向かっていたとすれば、ホースのつなぎ目などからガスが漏れ、引火したことなどが考えられる。点検を行っていれば通常では起きない事故で、メンテナンスが適切だったのか疑問がある」と指摘しています。
また、橋詰さんは「万一、燃料のガスに引火するようなトラブルが起きた場合も、ガスの容器のおおもとのバルブを閉めたうえで、備え付けの消火器を使えば、事故は最小限に抑えることができたはずだ」と話しています。
今回の事故で、トラブルが起きたあと、パイロットが先に降りたとされることについて、橋詰さんは、「パイロットがいなかったことで、気球の操縦方法やトラブルの対処方法を知る人がいなくなり、大きな事故につながってしまったのではないか」と話しています。
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