2月19日 5時39分
生命工学の手法を組み合わせ、豚の体内で別の豚の細胞からなるすい臓を作り出すことに東京大学などの研究グループが成功しました。
動物を利用して、医療用の臓器を作る技術につながる可能性があると注目されています。
東京大学と明治大学の共同研究グループは、豚の体の細胞から遺伝情報の詰まった核を取り出し、卵子に移植して受精卵に似た「クローン胚」を作りました。
そして、中の細胞の一部を遺伝子操作ですい臓をなくした豚のクローン胚に注入し、メスの子宮に戻して出産させました。
その結果、生まれた豚は注入した細胞からなるすい臓を持ち、血糖値は正常で、成体まで育ったということです。
遺伝子操作で失ったすい臓を作る能力が注入された細胞によって補われたとみられ、研究グループは人工的にすい臓を作り出すことに成功したとしています。
注入する細胞をヒトのiPS細胞に置き換えれば理論的には、ヒトのすい臓が出来ることから、研究グループは動物を利用して、医療用の臓器を作る技術につながる可能性があるとしています。
共同研究グループのリーダーを務める東京大学医科学研究所の中内啓光教授は、「ヒトのすい臓を豚の体内で作る技術的な準備が整ってきた。今後、ヒトのiPS細胞を使うための基礎的な研究を進め、最終的には、移植用の臓器を作れるようにしたい」と話しています。
今回の研究成果は、医療用の臓器を作る技術につながる可能性がある一方で、倫理面などで対応を迫るものとなりそうです。
病気やけがで失われた体の機能を補う再生医療の本格的な実用化を目指して、iPS細胞などの研究が加速していますが、立体的で複雑な構造を持つ臓器を作り出すことは現在の技術では極めて難しいとされています。
そこで東京大学と明治大学の共同研究グループは、動物の体内環境に着目し、3年前、マウスの体内で種類の異なる大型のネズミ、ラットのすい臓を作ることに成功しました。
さらに今回、臓器の大きさが人間に近い豚で人工的にすい臓を作り出すことに成功し、豚を利用して医療用の臓器を作る技術的な基盤が整ったとしています。
今後、遺伝子操作ですい臓が出来ないようにした豚の胎児に、ヒトのiPS細胞を変化させた細胞を入れ、すい臓を作り出す基礎的な研究を行いたいとしています。
しかし、今回の研究成果を基に医療用の臓器を作るためには、ヒトのiPS細胞などを注入した動物の胚を豚などの子宮に戻す実験が避けられません。
国のガイドラインは、倫理的な問題があるとして、こうした研究を禁止していますが、基礎的な研究が進んでいることから、現在、内閣府の懇談会で見直しが必要かどうか、検討しています。
動物の体を利用して臓器を作る研究が新しい段階に達した今、応用に向けた研究を認めるべきかどうか、安全性を検証するとともに倫理面で本格的な議論を行い判断することが求められています。
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